出題パターンを把握する

簿記3級はいわゆるオーソドックスで基本的な知識を問う問題だけが出題される試験です。よって、丁寧に何度も何度も過去問や模擬問題を繰り返すことで誰でも十分に合格点に到達することができます。

特に最近は大問ごとに出題範囲が固定される傾向が強く、第一問に「仕訳問題」、第二問に「帳簿記入問題」、第三問に「試算表作成問題」、第四問に「伝票記入問題」、第五問に「貸借対照表or損益計算書or精算表の作成問題」という流れになっています。

このことから受験生が的を絞って勉強しやすいということが言えます。

5つの大問の中で合格するための鍵となるのが第三問の「試算表」と第五問の「貸借対照表or損益計算書or精算表」だと言われています。何故なら、この二問だけで全配点の60%程度が振り分けられており、採点が完答式ではなくて部分点方式なので、分かるところだけ埋めていくだけでも一定の点数は期待できるからです。

よって、第三問と第五問では最後まで諦めずに頑張る気持ちが大切になります。

また、意外と盲点になるのが第一問の「仕訳問題」です。問題中に勘定科目が与えられ、これをつかって仕訳をして回答するのですが、使っている参考書や受けている講座とは違う勘定科目(例えば「現金」と「当座預金」が1つに纏められていて「現金預金」となっていたり、「当座預金」が「当座」となっていたりします)で提示されている場合がありますので、焦らずに同義の勘定科目を探す必要があります。

しかし、仕訳問題自体はそんなに難しいことはなく、参考書などの「5つの勘定項目(資産・負債・資本・収益・費用)」の仕訳パターンが理解できていれば、十分に満点を狙える問題です。

最後に第二問の「帳簿記入問題」と第四問の「伝票記入問題」ですが…どちらも実際の帳簿と伝票のパターンになれておけば、そんなに苦労する問題ではないと思います。

過去問や模擬問題でできるだけ多くの種類の帳簿や伝票に触れる訓練をしておけば、この問題での満点獲得はそう困難なことではないでしょう。


第1問のパターンと対策の解説

第1問は仕訳問題が5問出題されます。仕訳は簿記の基本中の基本ですので、ここでは1問も落とさない心づもりでいきましょう。

よく出される問題には、商品売買に関する問題と固定資産に関する問題があります。

商品売買に関する問題では、商品の売上と仕入、そして代金の決済方法に関する仕訳を解答します。
使用する勘定科目は、

売上-現金、売掛金、当座預金、受取手形、前受金
仕入-現金、買掛金、当座預金、支払手形、前払金


これらの組み合わせで仕訳を作成します。

代金の決済方法が複数あるので、問題文をよく読んで勘定科目と金額を正確に判断できるかがポイントになります。しかし出題パターンはある程度決まっていますので、学習の初期段階で繰り返し練習し、確実に解答できるようにしておきましょう。

固定資産に関する問題は、固定資産を購入したときと売却したときの仕訳が出題されます。
購入については商品の仕入とあまり変わらないので、それほど難しくはありませんが、売却のほうは「減価償却」の処理がからんできますので、難易度は高くなります。減価償却は第3問や第5問にも登場する処理ですので、時間をかけて繰り返し練習し、しっかり理解しておきましょう。

なお、仕訳で使用する勘定科目は問題文で指定されているので、必ずその中から適当な勘定科目を選んでください。それ以外の勘定科目を記入すると誤答になりますので、くれぐれも注意しましょう。

それでは実際にどのような問題が出されるのか、以下の仕訳例によって説明しましょう。

商品売買に関する問題

例:A商店に商品200,000円を売り上げ、代金は先方振り出しの約束手形で受け取った。

借   方 貸   方
(受取手形) 200,000 (売上) 200,000

もっともシンプルな問題です。「売り上げ」「約束手形」など、問題文の中にはっきりヒントが出ていますね。「あれ、「売上」は借方だっけ?貸方だっけ?」などとまごついていては、これ以降の問題に歯が立ちません。一読して「瞬間解答」できるように、勘定科目の理解を深めておきましょう。

例:B商店から商品500,000円を仕入れ、代金のうち200,000円は注文時に支払った手付金と相殺し、残額は掛けとした。
  
借   方 貸   方
(仕入) 500,000 (前払金) 200,000
    (手形売却損) 300,000

これも問題文の「仕入れ」と「掛け」で、「仕入」「買掛金」は瞬間解答できますね。少し応用を効かせたのが「前払金」ですが、「使用する勘定科目群」に出ていますので、うろ覚えでも大丈夫。ただし問題文からうっかり「手付金」などと書かないようにしましょう。

例:C商店から商品400,000円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。ただし、当座預金の残高は350,000円であったが、大手町銀行と当座借越契約を結んでおり、借越限度額は300,000円である。なお、引取運賃10,000円は現金で支払った。

借   方 貸   方
(仕入) 410,000 (当座預金) 350,000
(手形売却損)
1,000
(当座借越)
50,000
    (現金)
10,000

「当座借越」という勘定科目が出てきました。これは支払うべき小切手や手形の決済金額が当座預金の残高を超えても、銀行と取り決めた極度額までは自動的に、しかも返済日も利息も設けずに貸し付けてくれるありがたい制度です。
なお、その後当座預金に入金があった場合は、以下のようにまず「当座借越」の返済に充当され、余った分が「当座預金」に入金されることになります。併せて覚えておくとよいでしょう。

例:D商店に商品250,000円を売り上げ、代金は小切手で受け取り、ただちに当座預金に預け入れた。

借   方 貸   方
(当座借越)
50,000
(売上) 250,000
(当座預金) 200,000

固定資産に関する問題
まず購入時の仕訳から見てみましょう。
例:事務用のパソコン2台(@150,000円)を購入し、代金のうち200,000円は小切手を振り出して支払い、残額は月末に支払うこととした。なお、購入にかかる手数料10,000円は現金で支払った。

借   方 貸   方
(備品) 310,000 (当座預金) 200,000
 
(未払金) 100,000
    (現金)
10,000

購入時の仕訳は、商品売買の仕入の仕訳とよく似ていますね。「仕入」勘定が「備品」または「車両運搬具」、「建物」勘定に、「買掛金」勘定が「未払金」勘定に変わっただけです。
注意点としては、購入にかかる手数料を固定資産の取得原価に含めることが挙げられます。商品の仕入でも、手数料は仕入代金に含めるので、やはりそっくりですね。

次に売却時の仕訳です。
例:平成21年11月30日に営業用自動車1台(取得日:平成18年4月1日、取得原価:200,000円)を50,000円で売却し、代金は小切手で受け取った。
減価償却方法:定額法、耐用年数:5年、残存価額:取得原価の10%、記帳方法:間接法、決算日:3月31日、会計期間:1年間

この問題では決算日が3月31日ですので、取得日から前期決算(平成18年4月~平成21年3月)までの3年間の減価償却は終わっています。そこで売却時には、平成21年4月から11月30日までの8か月分の減価償却を行う必要があります。これは、「固定資産の売却時における価値がいくらなのか」を計算するためです。

解答を示すと以下のようになりますが、大事なのはやはり減価償却の処理の仕方です。第3問や第5問にも出題されるポイントですので、お手持ちの教材などで徹底的にマスターするようにしてください。

借   方 貸   方
(車両運搬具減価償却累計額) 132,000 (車両運搬具) 200,000
(現金)
50,000
(固定資産売却損)
18,000


第2問の出題パターンと対策の解説

第2問は完答でも8点と配点の小さい問題ですが、そのわりにひねった問題が出題されることもあるので、試験への準備期間が少ない場合は、あえて「捨てる」決断も必要かもしれません。

考えてみてください。第1問を難なくクリアしたものの、第2問で予想外の問題にぶつかったとします。もしここで試験時間の半分以上をとられるようなことがあれば、残りの第3~5問はガタガタになってしまう恐れがあるのです。そのうえ完答できたとしても得られる得点はわずか8点。逆に第2問を落としても失うのはわずか8点なのです。

ですので、あくまで3級に合格するためだけならば、ほかの問題をある程度学習したあとに時間的余裕があったら第2問の勉強をする、というのもひとつの作戦です。

しかし一方で、第2問でよく出される補助簿や勘定記入などは、経理の実務では必須といっていい知識ですので、簿記3級取得によって経理職への転職などを考えている方は、新しい職場で即戦力となれるように、よく学習しておいたほうがよいでしょう。

それでは果敢にも第2問に挑戦する方へ、その対策方法をご紹介しましょう。
出題される確率の高い問題には、補助簿と勘定記入があります。

〔補助簿〕
① 商品有高帳
② 小口現金出納帳
③ 受取(支払)手形記入帳
④ 売掛金(得意先)元帳、買掛金(仕入先)元帳
⑤ 売上帳、仕入帳


各帳簿の書式や記入方法は教材などで確認していただくとして、大事なポイントは帳簿の正確な記帳(取引日、相手先名、金額、摘要など)です。

配点は「完答で満点」ではなく部分配点なので、できるところから解答していくことも有効な作戦です。

〔勘定記入〕
勘定記入の問題も、相当な頻度で出題されています。
代表的なものに総勘定元帳の穴埋め問題があります。与えられている資料から仕訳を推定し、関連する勘定の穴埋め部分を記入するという方法で解答します。


仕訳と勘定記入の基本をおさえておけば難しい問題ではありませんが、仕訳から勘定への転記でミスをする可能性が高いので、練習を重ねて慣れておきましょう。

実際には、前述のように第2問は非常にヤマを張りづらい問題です。過去に補助簿の問題が多かったから今回もそうだろうと予想していると、まったく違う種類の問題が出されて面食らった、という声も聞きます。たとえば、第113回の「分記法による商品売買」など、かなり特殊な問題が出題されることもありました。

試験を主催する商工会議所のHPにも「特に最近の受験者をみると、予想以上に過去の問題の出題パターンをなぞった学習に終始している傾向がありますので、過去の出題内容ばかりでなく、出題区分表の範囲全般にわたって学習するとともに、新しい会計基準等についての勉強が望まれます」とありますが、過去問の傾向にとらわれすぎず、「これは出ないだろう」という問題にも時間を見つけて取り組んでおくことが必要です。


第3問の出題パターンと対策の解説

第3問は第5問と並んで高配点の問題で、完答で30点または32点になります。
出題内容は試算表の作成がオーソドックスです。資料として与えられた期中取引または貸借対照表などをもとに、試算表を作成する形式です。

試算表には、残高試算表・合計試算表・合計残高試算表の3つがあり、記入すべき金額もそれぞれ異なります。それぞれの違いをしっかり理解し、誤った解答をしないように気をつけましょう。

試算表作成のポイントは、まず一連の期中取引を仕訳し、次にそれぞれの勘定を集計し、最後に試算表に転記するという流れを、いかに素早く正確に行えるかにあります。そのため、第1問対策のように仕訳の反復練習だけでは不十分です。仕訳は完璧にできたけれども、勘定の集計と転記でミスを犯してしまった、ということが起こりうるからです。

試算表のフォームを見ると、「現金」勘定から始まり、資産・負債・資本金・収益・費用の諸勘定がずらっと列記されているのがわかります。仕訳の集計・転記の作業は、これら諸勘定の試算表の借方・貸方に正しい金額を埋めていく作業です。

そのうち、おおむね10か所が配点個所になりますが、各勘定は相関関係にありますので、一つの間違いがほかの間違いにつながりますし、必ず配点される合計欄にも影響を与えてしまいます。ぜひ、しっかり練習してパーフェクトを目指しましょう。

[仕訳(またはT字フォーム作成)]
完答のためにまずは仕訳を間違えないことが一番です。取引の内容は商品売買に関するものが多数ですし、使用する勘定科目も試算表を見ればわかりますので、仕訳自体はそれほど難しいものではありません。

問題は、仕訳に時間をかけすぎてはいけないという点です。最後に控えている第5問のボリュームを考えると、第3問は30分以内、多くても40分でクリアするのが望ましいと思われます。30分で試算表を完成させるためには、仕訳にかけられる時間はせいぜい15分といったところです。正式な勘定科目名で仕訳していては15分などあっという間ですし、かといってあまりにも乱雑に仕訳していては、集計するときにわけがわからなくなる恐れがあります。

最適な時間短縮方法は、何度か問題を解いてみて発見していくのが一番ですが、ここではオーソドックスな方法をご紹介します。

・勘定科目を省略して書く
例:現金→現、売掛金→売×、売上→売↑、受取手形→受手……のように、各勘定科目の略称を決めておき、集計作業で間違えないよう慣れておく。

・取引は仕訳せずに、T字フォームを作ってそこに記入していく
はじめに各勘定のT字フォームを作る必要があるので、多少手間はかかりますが、あとの集計作業は格段に楽になります。T字フォームの勘定科目名は、やはり略称で書くのが時間短縮のコツです。ある程度練習を積んでおかないとスピーディにこなせない作業ですので、日ごろの学習で繰り返し練習しておきましょう。

また、期中取引が「重複あり」の場合は要注意です。たとえば、
・現金の増減
現金売上高     20,000円
・商品の売上高
現金による売上高  20,000円
と示されていた場合、これらを両方仕訳しては「二重仕訳」になってしまいますので、重複する部分は相殺して、集計ミスをしないようにしましょう。

[集計・試算表への転記]
仕訳、またはT字フォームに起こした各勘定の借方・貸方の金額を集計し、試算表に転記する作業です。

「現金」から順次集計をしていきますが、その際、その勘定(「現金」なら「現金」)の仕訳、T字フォームの金額だけをもれなく拾って集計し、試算表に転記することがポイントです。また見終わったところはチェックマークを付けて、二重に集計しないように気をつけましょう。

試算表への転記が終わったら、借方・貸方の合計を計算して、貸借一致を確認します。言うまでもなく貸借が一致しない場合は必ずミスを犯しています。そのときは慌てずに仕訳やT字フォームを見直し、修正しましょう。

仕訳またはT字フォームの作成が終わって緊張感がゆるむと、集計や転記作業で集中力が途切れる恐れがあります。それほどボリュームの大きい問題ですので、日ごろの学習で集中力を維持する練習をぜひ繰り返しておきましょう。


第4問の出題パターンと対策の解説

第4問は、伝票問題が多く出題されます。配点は8点まれに10点と、決して多くはありませんが、ヤマを張りやすい問題ですので、ぜひ完答をめざしてください。

伝票会計は仕訳や決算書と違って、やや特殊な形式なので、慣れるまで少し時間がかかるかもしれませんが、パターンは決まっているので一度理解してしまえば非常に解きやすい問題でもあります。

頻繁に出題されるのは、3伝票制といわれる伝票作成方法です。
3伝票制では、入金伝票・出金伝票・振替伝票の3種類の伝票を使用します。
入金伝票・出金伝票はその名のとおり、現金の出入りに関する取引を起票したものです。入金伝票は「現金の増加」、出金伝票は「現金の減少」と決まっているので、あとは相手勘定が何なのかを考えるだけでOKです。
振替伝票にはそれ以外の取引、つまり現金の増減に関係しない取引を起票します。たとえば、売上、仕入の「掛け取引」や「手形取引」がこれにあたります。

3伝票制の出題パターンは、大まかに2通りあります。

  1. 現金の取引とそれ以外の取引に分け、入出金伝票と振替伝票にそれぞれ記入する方法
  2. いったんすべての取引を振替伝票にまとめたのち、現金取引の部分を入出金伝票に記入する方法

では、実際の問題で①と②の違いを見てみましょう。
例:商品600,000円を仕入れ、代金のうち200,000円を現金で支払い、残額は掛けとした。

まず、取引の仕訳を考えてみます。
(借)仕入    600,000 / (貸)現金   200,000
(貸)買掛金  400,000

次に、①、②それぞれの方法で伝票を作成します。

[出金伝票]
仕入 200,000

[振替伝票]
仕入 400,000/買掛金 400,000


[振替伝票]
仕入 600,000/買掛金 600,000

[出金伝票]
買掛金 200,000

①、②いずれも使用する伝票は同じですが、金額や相手勘定が違っていますね。

①のほうは比較的わかりやすいと思います。
仕訳の貸方にある現金・買掛金の金額を、そのまま出金伝票・振替伝票に記入し、相手勘定を「仕入」にすれば一丁上がりです。

それに対し、②は「あれ?」と思われるかもしれません。
「[振替伝票]の「買掛金」の金額が、なぜ600,000円なの? 実際の掛け代金は400,000円じゃない」
とか、
「[出金伝票]の相手勘定がなぜ「買掛金」なの? 仕入と同時に現金払いしてるんだから、相手勘定は「仕入」でしょ」
などの点に、まず違和感を抱きますよね。

違和感を解消するために、②の方法については仕訳の段階で以下のようにイメージするとわかりやすいと思います。
(借)仕入 600,000 / (貸)買掛金  600,000(うち、現金200,000)

取引の仕訳と見比べると奇妙に思える②の起票方法、もちろん間違いではありませんし、①と比べて良い点もあるのです。

それは、「[振替伝票]を見れば、仕入(または売上)の総額がわかる」という点です。①の方法ですと、[出金伝票]と[振替伝票]の両方を見ないと、仕入・売上の総額はわかりませんよね。そういった利点からみると、②の方法はやや複雑ながら、実務的で便利な方法といえます。

最初にご説明した「いったんすべての取引を振替伝票にまとめ」というのが、「仕入」の全額をいったんすべて「買掛金」に振り替える、ということになります。そして、現金で支払った金額を、「買掛金」から「現金」に振り替えます。
やはり慣れが肝心ですので、とくに②の方法については基礎から応用まで繰り返し練習し、しっかりマスターしておきましょう。

第4問には伝票問題のほかに、勘定記入や訂正仕訳の問題などが出題されることもありますが、第2、3、5問の学習をしっかり行っていれば、十分対応できるレベルの問題です。

しかしヤマが外れて、「伝票問題に勝負をかけたのに、がっかり…」と思われるかもしれませんが、伝票会計は実務に必須の知識ですし、勉強しておいて損はありません。経理職への就職・転職などをお考えの方は、ぜひマスターしてください。


第5問の出題パターンと対策の解説

いよいよ最後の砦、第5問の攻略法です。
第5問の配点は30点または32点と、第3問と同じく高配点なので、3級合格のためにはなにがなんでも突破しなければならない関門です。絶対に完答を狙う覚悟でいきましょう。

まず肝に銘じていただきたいのは、第5問で出題される「精算表の作成問題」は、付け焼刃では歯が立たないということです。

ボクシングではありませんが、「リング(試験会場)では練習したことしかできない、ラッキーパンチはない」というのは、まさにこの第5問にあてはまる言葉です。

なぜかというと、期末整理事項の修正仕訳から転記、そして精算表の完成にいたる一連の流れをしっかり理解し、さらに時間内ですべての処理を終えること。これは、一夜漬けはもちろん、数回程度の練習でマスターできるものではありません。

本番までの準備時間がない、という方も、第5問の対策にはできるだけ時間をとるようにしてください。そして少なくとも3回は模擬試験に取り組み、制限時間内で完答できるという確信をつかんでおいてください。

それでは、実際の問題を見てみましょう。
第5問の出題パターンには以下の2つがあります。

“解答用紙の精算表の「試算表」欄が…”
①完成しているパターン(確定型)
②未完成のパターン(推定型)

出題頻度としては①が圧倒的に多いようですので、まず①のパターンから対策方法を考えていきましょう。

①のパターンでは、「完成された試算表」と「期末整理事項」が資料として与えられます。
解答の流れとしては、
(1)期末整理事項の仕訳を行い、精算表の「修正記入」欄に転記する
(2)各勘定科目の「試算表」欄と「修正記入」欄を合算し、「損益計算書」欄または「貸借対照表」欄に記入するとなります。

こう書くととても簡単そうですね。そうです。流れを把握して解き慣れてしまえば、決して難しい問題ではありません。

しかし、肝心な(1)の仕訳を完璧にクリアしないと、その後の転記・合算に影響するのは言うまでもありません。
期末整理事項で必ず出される項目と、その仕訳例を以下に挙げておきます。テキストなどで繰り返し練習し、これらを完全にマスターすることを心がけてください。

・売上原価の計算
(借)仕入    ×××  / (貸)繰越商品×××
(借)繰越商品  ×××  / (貸)仕入  ×××

・貸倒引当金の設定
(借)貸倒引当金繰入 ××× /(貸)貸倒引当金 ×××

・売買目的有価証券の評価替え
(借)売買目的有価証券 ×××/(貸)有価証券評価益   ×××
または
(借)有価証券評価損  ×××/(貸)売買目的有価証券  ×××

・固定資産の減価償却
(借)減価償却費    ×××(貸)(備品または建物)減価償却累計額 ×××

上記に加えて、「経過勘定」の処理もよく出題されます。

経過勘定には、前払費用・前受収益・未払費用・未収収益の4種類があります。それぞれに「費用」「収益」と付いていますので勘違いしてしまいがちですが、実際は、
「前払費用」「未収収益」→資産
「前受収益」「未払費用」→負債
です。くれぐれも気をつけてください。

では、それぞれの事例と仕訳例を見てみましょう。

①前払費用(費用の繰延べ)
例:次期以降の保険料を前払いした場合
(借)前払保険料 ××× /(貸)保険料  ×××

②前受収益(収益の繰延べ)
例:次期以降の家賃を前受けした場合
(借)受取家賃  ×××/ (貸)前受家賃 ×××

③未払費用(費用の見越し)
例:未払いの利息がある場合
(借)支払利息 ××× /(貸)未払利息  ×××

④未収収益(収益の見越し)
例:利息の未収分がある場合
(借)未収利息 ××× / (貸)受取利息  ×××

これらの仕訳を完成させたのち、「修正記入」欄への転記を行います。転記モレを防ぐために、それぞれの仕訳にチェックマークを付けるなど工夫するのが賢明です。転記が終わったら、貸借の合計が一致していることを確かめます。

最後の作業は、「損益計算書」欄と「貸借対照表」欄の記入です。「試算表」欄と「修正記入」欄の金額を一つずつ正確に合算し、「損益計算書」欄または「貸借対照表」欄に転記していきます。

次に②未完成のパターン(推定型)についてご説明します。
解答までの作業の流れは①と同じですが、「期末整理事項」の資料が与えられない点が異なります。

「期末整理事項なしで、どうやって修正仕訳を行えばいいの?」と思われるかもしれませんね。そこがこのパターンの厄介なところなのです。期末整理事項の代わりに用意されるのは“虫食い状態に金額が入っている精算表“。ここから期末整理事項を推測し、修正仕訳を行う必要があるのです。

しかし、注意深く精算表を見ていけば、空欄を埋めていくのに必要な情報がばらまかれているのに気づくでしょう。

たとえば、「売買目的有価証券の評価替え」の場合、「売買目的有価証券」の金額がわからなくても、相手勘定である「有価証券評価損」の金額が記入されていれば、そこから期末整理事項を推測し、修正仕訳を起こすことができます。他の期末整理事項についても同様に、一方の勘定が不明でも、もう一方の勘定が必ず記入されていますので、そちらを手掛かりに必要な仕訳をモレなく起こしていきましょう。

第5問は配点もボリュームも大きいので、絶対に落とせない問題であると同時に、大幅に時間を取られる問題でもあります。

できるだけ短い時間で完璧に解答するためには、何にもまして練習の積み重ねが大事です。1回解くだけで相当な時間とエネルギーを要しますが、週末などまとまった時間がとれるときに練習を繰り返しましょう。